誰も戦争を教えられない/古市憲寿

「戦争を知らずに、平和な場所で生きてきた。そのことをまず、気負わずに肯定してあげればいい。」

この部分だけを切り取ると、腑に落ちないかもしれない。

『きちんと過去の戦争に向き合わないといけない、世界各地で勃発している紛争当事者に思いを馳せて、、』と感じる人もいるだろう。

しかし、きちんと全編を通して読むことで、筆者の主張なり思いが伝わってくる。

 

高橋源一郎さんの「ぼくたちの戦争なんだぜ」を読んで、この本にたどり着いた。

・絶対に守らなければならない、いつもの生き方が詰まった日常

・いつも持っている感覚、自分の中で生まれ育った感覚、それ以上に強く自分をささえてくれるものないのである。

 

恐らく、古市さんも同じようなことを伝えたいのだと感じたが、古市さんは伝え方が巧い。作中、trfやSEKAI NO OWARIの曲の歌詞を引用しているのだが、それがスッと心に入ってくる。引用して記載するタイミングが秀逸である。

 

古市さんの本は、意図的であると考えるが、きちんと全編を通して読まないとわからないように書かれている。タイトルや帯には、あえて煽るような記述が含まれていたりする。SNS等では、部分部分を切り取って批判的なコメントも見受けられる。

読書の醍醐味というか、きちんと本と向き合う姿勢が試されるというか、そういった意味でも考えさせれる著書である。

 

追記:戦争の「小さな記憶」と向き合っていきたい。