何もかも憂鬱な夜に/中村文則

「アメーバとお前を繋ぐ何億年の線」

「現在というのは、どんな過去にも勝る。」

「お前の命というのは、本当は、お前とは別のものだから。」

 

恩師である施設長の言葉、主人公の僕の言葉に感銘を受けた。

自分自身の人生を俯瞰して見る、過去からの大きな流れの中で捉えることで、救われる人がいる。

 

昨今、「親ガチャ」という言葉に象徴されるように、自分の生まれ育った環境に諦観する風潮がある中で、そんな環境に置かれても生きる希望を見出す言葉が心に沁みた。

 

最後に希望で終わってよかった。

中村文則さんの作品は、文体や展開に引き込まれる一方、じめじめとした湿度のまま、陰鬱な雰囲気のまま終わってしまう、読後感がどんよりとする印象があった。

 

最後の山井の手紙、山井にとって主人公の僕は、僕にとっての恩師である施設長のような存在になったのだろう。